こんにちは。ちえです。
前回の投稿では、認知症行方不明者の捜索アプリのお話を書きましたが、
認知症高齢者が行方不明になってしまうのは、人ごとではありません。
実は、15年前、私の母も東京で行方不明になった事件がありました。
当時住んでいた私のマンション(東京荒川区)から、突然いなくなってしまったのです。
今回はその時のことを書きたいと思います。
田舎から出て来た認知症の母が、東京で行方不明になったのはなぜか?
その当時は、母の認知症もそれほど重くなくて、
毎年、ツツジが美しい季節になると、田舎から両親を呼び寄せて、温泉旅行に連れていっていました。
東京に来たついでに、
「旅行したり、巣鴨で買い物したりして、一ヶ月ほど滞在する」ということをやっていたのですが、
母がいなくなったのは、その間の出来事です。
その日は、私が仕事に出かけていて、父と母、2人で留守番をしていたのですが、父がトイレに入っている間に、
母が姿を消してしまいました。
爽やかな5月の昼下がり、14時ごろのことです。真昼間の東京で、認知症の母が行方不明になってしまいました。
父が、すぐに付近を探したようですが、なにせ、慣れない東京。
見知らぬ土地で、探せるはずもありません。
興奮した声で、仕事中の私の携帯に電話してきました。
連絡を受けて、頭の中は真っ白です。
交番に行方不明の届け出をしてから6時間。住民の通報で発見されました!
携帯を握りしめたまま、職場を早退した私は、大慌てでマンションに帰り、自転車に乗って近所を走りまわりました。
まずは、駅前の交番に、迷子の届け出。
どうしよう・・・。どうしよう・・・。どうすればいいんだろう?
母に何かあったらどうしよう・・・。
母がいなくなってから、既に5時間が経過し、付近はだんだん暗くなってきました。
途方にくれた20時過ぎ、交番から「それらしい人が見つかりました」と電話が。
母が見つかったのは、自宅から500メートルほど離れた、見知らぬアパートの前です。
そこに住む、若い女性からの通報でした。
その女性によると、トントン、トントン、とドアを叩く音がするので、開けてみると、
上品なおばあちゃんが、ニコニコ笑って立っています。
用件を聞いても、うまく答えることができません。
おかしいなと思いつつドアを閉めて、しばらくすると、また、トントン、トントンとノックの音。
窓からそっと覗くと、
ドアの前を行ったり来たり、ずっーとうろうろ歩いていたそうです。
「これは、様子がおかしい」と、不審に思ったその女性が警察に通報してくれたのです。
交番に迎えに行くと、母は、おまわりさんの横に、ちょこんと座っていました。
駆けつけた私と父を交互に見比べ、母は、ほっとしたように、ニッコリと笑いました。
見つかってよかった!神様に心から感謝しました!!
交番では、ごく簡単な説明と、身元引受けのサインをして、母の手をひいて交番を出ました。
「お母さん、疲れたでしょう? お腹もすいたね。おうちに帰ろう・・・。」
マンションまでは、歩いてもたった3分の距離なのに、なぜか、パトカーで送ってくれました。
「ぼくも、田舎が遠いんです。これからも、なにかあったらご連絡ください。」とおまわりさんは言いました。
私は、ずっと涙をこらえました。私が泣いたら、母が不安がるだろうと思ったからです。
母が見つかってよかった!
無事にかえってきてくれてよかった!
母の笑顔が見れてよかった!
知らない街を歩きながら、どんなに心細かったのだろうと思うと、胸が張り裂けそうで、
安堵感とせつなさで、うっかり号泣してしまいそうでした。
母は、なんとなくドア開けて、マンションの外に出てしまったのだと思います。
きっと、お散歩でも、するつもりで。
美しいツツジの花が咲く春の季節の出来事です。
歩いているうちに、どこにいるかわからなくなったんだと思います。
おまわりさんの話によると、母が見つかったマンションは、どことなく、
私のマンションの玄関にそっくりだったそうです。
トントン、トントンと、ノックしていたのは、きっと、私の部屋だと思い込んでいたのですね。
ツツジが咲くの季節がくると、いつも、母をさがして自転車で走りまわったことを思い出します。
都電荒川線沿いの、色鮮やかに咲く満開のツツジ。
再会したときの、母のホッとした笑顔も。父の慌てふためいた様子も、あのツツジの風景とともに、
今も鮮やかによみがえります。
母が無事に帰ってきてくれた事は、神様に感謝するしかありません。
それと同時に、今この瞬間にも、ご家族のもとに帰れないでいる高齢者がいると思うと、胸が痛みます。
行方不明の高齢者が、ご家族の元に帰れますように。
前回の投稿でも書いたとおり、認知症の行方不明者は、1万5000人で過去最多だそうです。
母が行方不明になった15年前と違い、今はITによる見守り機器も普及しています。
でも、15年前のあの日、母のことを交番に知らせてくれたのは、近くに住む、若い女性でした。
どんなにITが発達しても、地域の目、人の暖かさのチカラというのは、かけがえのないものなのだと思います。
機械+地域の見守り。
認知症の行方不明高齢者を救うシステムが、もっともっと世の中にたくさん増えて、
はぐれてしまった高齢者が大切な家族のもとに戻りますように。。。
そう願う、今日でした。
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