回想録

【遠距離介護】帰宅要求について〜グループホームを脱走した父の話。

親が高齢者施設に入居して、

やっと一安心・・・。

ほっとするのもつかの間、
家族を、たびたび悩ませるのは、
『家に帰りたい!』
という、
親の帰宅要求ではないでしょうか?

そんな時、
いつも思うのです。

親にとって、家は、
『人生そのもの』
なんだろうなぁ・・・と。
つい、先日も、
そんな帰宅要求の場面に立ち会い、
「私の父もそうだったなぁ」
と思い出しておりました。

ただ、
父の場合は、
かなりのレアケース。

空気は一切読まない、
筋金入りのやんちゃぶりを発揮。

せっかく入所させて頂いたグループホームを
『脱走→自宅に立てこもる』
という荒技を
華麗に成し遂げたのです。

父がやりそうな、
見事なチカラ技です。

当時、
東京の会社で、

『父、脱走、立てこもり』

の知らせを受けて、
さすがに、私も、怒り心頭!

『私が・・・・
どんな思いで会社に頭を下げて・・・
介護休業までとって・・・
そこに入所させてと思ってるのヨォ!!!!』

その日は、
怒りと情けなさで、
心理的にヘトヘトになったのを思い出します。

結局、父に根負けして、

元のとおり、
綱渡りの、自宅独居生活に戻る事になったのですが・・・・。

さて、
希望通り、
再び在宅独居生活を始めて、
ご満悦の父。

帰省した私に、
『この家は、最高だ!こんな立派な家はない』
と自慢。

私は、

「こんな、庭もない、老朽化してボロ家のどこが???」

それより、
なんで、こんなに家にこだわるのよ!
なんで、施設に入ってくれないの??」

と、
情けなくて悔しい気持ちになった事を思い出します。

なぜ、情けない気持ちになったのか?

今なら、わかります。

それは、
「父がグループホームで暮らす」
という、
その時の私が思い描く、
希望の形ではなかったからでしょう。

今なら、わかります。

それは、あくまでも、
私の希望であり、
その当時の、
父の希望ではなかったのだ、と。

あんなボロ家でも、
脱走までして、戻りたいほど、
父にとっては、
大切な自分の居場所だったのでしょう。

この家は、
父の人生そのものだったのだ・・・と。

もちろん、
そんな風に、
冷静に思えるようになったのは、
脱走事件から、大分年数が経って、
父が寝たきりになってからの事です。

脱走当時は、
怒りと情けなさと諦めと虚脱感で、
フルフルしておりました(笑)

さて、
先日の話に戻ります。

目の前にいる、
帰宅願望の強いおじいちゃんの言葉に、
私は、ずっと、耳を傾けていました。

その方も、
自分の家が、いかに良いところか、
駅から近いし、お店もたくさんあるし・・etc。
「あの家に50年も住んでるんだよ・・・」と。
家の思い出、家族の思い出を話してくださいました。

住み慣れた家で暮らしたいと思うのは、
誰もが持つ、普通の感情です。

だけど、
そうもいかない現実もあります。
遠距離介護の場面では、特にそうかもしれません。

こういう場面に立ち会った時、

いま、
こんなふうに、

『家に帰りたい』という
高齢者の気持ちに、

素直に寄り添えるのは、

トラブルメーカーの父に鍛えられたからかもしれません。

めちゃくちゃだった父に、、、、感謝(笑)

ABOUT ME
ちえさん
遠距離介護のケアミーツ代表